以前、週刊少年マガジンに、少年漫画らしからぬジャンルの漫画が連載されていた。 「ザ・スター」 頭脳、性格、容姿、運動神経と、「天は人に二物を与えず」という言葉を根底から覆す程に欠点を見いだせない少年「長瀬優也」。しかし自分が熱くなる何かを見いだせないままであった彼を見かねた、幼なじみの少女「めぐみ」は、勝手に映画のオーディションに彼の名前で応募してしまう。そう。まさに 「えー、私は出るつもりなかったんですけど、友達が勝手に応募しちゃってー」 というまさに王道を行く展開。案の定、長瀬優也はオーディションに優勝し、「役者」という職業に心惹かれるようになるという、少年誌には珍しい設定であるが、知らぬ間に何の違和感も無くなっている事に気づかされる漫画なのである。それを順を追って説明していこう。 はじめての芸能界、しかも映画の主人公という大役をおおせつかった長瀬だが、右も左もわからない彼は、ある一人の大御所の弟子入りをし、演技に磨きをかけていくことになる。 それを良しとしない売れっ子アイドル、二枚目俳優などが彼に妨害工作をしかけてきたりするが、ものの見事に全部打破する長瀬。そのうちそんな悪役も、「ああ。ヤツはなんてすごい俳優なんだ!」と勝手に改心して一件落着。そんな感じのパターンがしばらく続く。 ・・・が、それだけじゃやっぱり少年誌の読者は満足しなかったのだ。 そのうち出てくる悪役が無茶ばっかりしやがります。長瀬を本気で殺そうとしたり、長瀬に惚れてる女アイドルの服を生放送で破いたり、殺陣用の小道具の刀を真剣にすり替えたり。当然カットがかかりますわな。そんなん放送出来るか馬鹿。でも、長瀬も悪役も決まってこう言うのです。 「続けろ!こちとら役者に命かけてんだ!」 ああ、この人達、アホなんだ・・・ 命のかけ方を精一杯間違えてます。テレビ番組中に真剣で斬られて死んだ俳優なんて聞いたことないっつーの。 そして話が進み、一世一代のアクション映画に出演が決まった長瀬。ハリウッドの超有名ハリウッドアクションスターと主役を張っての勝負が繰り広げられる事に。でもその勝負ってのが何かおかしい。何で台の上にトマトジュース缶が5本並んでいるのか。どうやらこういう勝負らしい。 「この5本のトマトジュースを手裏剣で見事射抜いてみせよ」 一世一代のアクション映画って、筋肉番付か何かですか。 いや役者なら演技力で勝負しろよ。そんなアクション出来なくたって。とか思っているうちに勝負がはじまった。まずはハリウッドスターから。見事手裏剣で缶の中心を射抜いた。さあ次は長瀬の番だ。一体どんなアクションを見せてくれるのか。 しかし!長瀬の投げた手裏剣は缶の真上を通り過ぎただけ!な、長瀬が負けてしまった!?と思いきや・・・す、すげえ! トマトジュースのプルトップだけ手裏剣でキレイに取り除いてる!!って馬鹿。 いや確かにすごい。うん。すごい。むしろ不可能なくらいすごいけど、やっぱりなんか役者を勘違いしてるから。そして長瀬主役に抜擢。そして監督が抜擢の際に述べた理由がまたすごい。 「刺さるだけでは致命傷は与えられないかもしれないが、長瀬のあの手裏剣さばきなら、急所をひとつきにする事が出来る。」 明らかに共演者を殺る気ですこの監督。 つーか演技で、映画で人殺すなよ。そんなもんはトワイライ(以下略)だけで十分です。しかもこの監督、ハリウッドスターだけじゃ飽きたらず、世界最強と呼ばれている格闘家まで呼び出す始末。しかもラストシーンで長瀬と真剣勝負までさせる気です。共演者だけでは飽きたらず、主演まで殺す気かこの監督は。 しかし長瀬は単なる役者。このままで格闘家に勝てるはずもなく。いや別に勝たなくてもいいんですけどね普通は。でもなんかこの漫画だと勝たなければならないそうなんですよ。で、色々と修行をして、すごい技を身につけて帰ってきます。つーか演技の修行をしろよ演技の。 シーンはクライマックス。いよいよ格闘王との対決の場面。やはりボコボコにされる長瀬。そこで鉄拳チンミとかに出てきそうな格闘王の必殺技が炸裂!内臓を内部から破壊してしまうという無茶な技を!つーかそんな技役者に使うな馬鹿!危うし長瀬!スター漫画なのにそんな必殺技で終わってしまうのか! だがそれだけで終わる長瀬ではなかった!修行で身につけた技を披露する時が来たのだ!おっと長瀬、間合いをとって、右手を格闘王に向けて全神経を集中だ!な、なにをする気なんだ長瀬! 「なんたら流 ヨウメイ波ぁあああぁぁあああああああああああああ!!」 スドオオオオオオオオオン・・・ ・・・・・・。 ・・・か・・・か・・・。 かめはめ波出しやがったこの俳優。 格闘王に勝利ー。うわー。やっぱり僕らの長瀬優也はこうでないとー。やっぱりスター漫画って 努力・友情・勝利 に限るよね馬鹿じゃねえの。 |