2011,09,30 / 19:38
小さい頃、私は母が嫌いだった。小学校の頃にいじめられていた私。いつも泣きながら帰ってきたものだ。そんな時に母は、優しくなぐさめてくれるわけでもなく
「もっとしゃきっとしなさい!」
「そんなんだからいじめられるのよ!」
と、小学生には厳しい檄を飛ばしてきた。なんで?どうして?こんなにつらい思いしているのに、どうしてわかってくれないの?
母に言われて渋々学校に行っていた私。毎日のようにいじめられ、その日も泣きながら帰る途中、忘れ物に気づき、自分の教室に戻った。
誰もいない教室・・・のはずだった。しかし話し声が聞こえる。人影は二つ。担任の先生と母だった。なんでお母さんがここに?私は疑問と好奇心に、扉の隙間から覗いてみた。
「はい。重々承知しておりますが・・・」
「お願いします。いい子なんです。本当に優しい子なんです。」
「はい。それもわかっております。」
「優しすぎて、立ち向かっていけないんです。」
「しかし・・・お母さん。毎日足を運ばせてしまって本当に申し訳ございません。」
「いいんです。これくらい。あの子のつらさに比べれば。」
母は泣いていた。私の前では決して見せない弱弱しい姿。全ては私のためだった。いじめに負けないような、強い子にするため。
そのためには自分が泣いていてはいけないのだ。だからあんな態度を・・・。本当は心の中では泣いてくれていたのだ。母もつらかったのだ。
そして毎日学校に赴き、先生にこの問題解決のために、懇願してくれていたのだ。親の心、子知らずとはまさにこの事。私はそんな事全然知らなかった。
なのに一方的に母を嫌ったりして・・・幼いながらも自分の情けなさに気づき、涙がこぼれた。ひっく。ひっく。我慢しようにもおさえられない。
「誰だ?入ってきなさい。」
先生に気づかれ、泣きながら教室に入る。驚く二人。まさか本人がここにいるとは思ってもみなかっただろう。母はあわてて涙をぬぐっていた。
「もう話は済んだから。お母さんと一緒に帰りなさい。さ、お母さん・・・」
先生にうながされ、私のそばに来る母。真っ赤な目で、ちょっと照れくさそうに、それでも優しく微笑みかけてくれた母。
「恥ずかしいとこ見られちゃったね。ごめんね。お母さんがしっかりしないとね。」
何も言えず、ただ泣きじゃくる私の手をそっと握りしめてくれた。あまり大きくはないけど、とても温かくて、とても柔らかい手。
あの手の温もりを、私は決して忘れはしない。母さん。天国で見てくれていますか?まだまだ情けないまんまの俺ですけど、頑張って生きてます。
・・・まあほぼ嘘だけどな。
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