2009,06,20 / 00:00
そう。それは確かに、そこに存在していた。
私の友人たちは、そのほとんどが「人を笑わせる」という行為が大好きである。誰かが笑い話をすれば、我も我もと、そこから連想される面白いエピソードを話してくる。友人AとBも例に漏れない仲間達であった。
私とBは、Aの家に泊まりに行った。まる1日遊び、Aの家に戻った時は、3人が3人とも汗だく。ともすれば当然風呂に入ろうという話に。
風呂は1つ。一番風呂は私、次にBが入り、家主のAが最後に入る事になった。1人が入っている間に、残っている2人はお互いにくだらないエピソードを語り合い、お互いを笑わせあう。我々にとってごく当たり前のコミュニケーションである。
Bが風呂からあがり、私とAの待つリビングにやってきた。AがBに、待ってる間に私と交わした会話の中から、特に面白かったものを話しながら、おもむろにズボンを脱ぎ始めた。
…ドクン。
そう。それは確かに、そこに存在していた。
彼の股間から、恥じらいながらも、我々に挨拶でもしたいかのように。
物陰に隠れながらも、好きな人を見つめ続ける乙女さながら、パンツのカーテンに身を隠し、顔だけ出してこちらを伺っている、Aの大切なカワイコチャンだ。そしてそれに全く気付かず、話を続けるA。
…どうする?まさかBがあの肌色のカワイコチャンに気付いていないはずがない。よくよく考えれば、Tシャツにトランクス、股間からはソレを先端部だけ露出させているAの姿は、相当なすっとこどっこいだ。
彼のプライドを傷つけない為に、Bはあえて切り出さないだけかも知れないのだ。そんな中、私がいけしゃあしゃあとそんな羞恥的カミングアウトをしてしまうと、Bの気遣いを踏みにじってしまうことになる…っ!
ならば、このまま話が終わり、Aが風呂に行くのを待ち、何事もなかったかのように振る舞うのが私の使命だ。知らぬが仏とは良く言ったものだ。
…いやまて。考えろ。もっとよく考えるんだ私。その場は気付かれなかったとしても、脱衣所でパンツを脱ぐとき「あっ!コンニチハしてるよ俺!」と気付いてしまうかも知れない。
後で恥ずかしい思いをするより、いっそのこと今ここで暴露して笑いに繋げた方が、傷は浅いんじゃないのか?
っていうか話長いなA!
一体私の脳内でどんだけのマルチタスクが働いてると思ってんだ。さらにそこに「Aの話を聞いてその内容を理解しつつ、何事も無かったかのように振る舞う」という複雑なタスクをねじ込むんじゃない!とっととそのまま風呂に行けば、私も諦めがつくというものを。
ええいだんだん腹が立ってきた。いやそもそもBは何してんだ。まだダンマリを貫き通すつもりか。それとも、ひょ、ひょっとして気付いてないとでも言うつもりか?あんな存在感を放ちまくっている物体に?正気か?
ええいままよ!もうどうなっても知るもんか!
「いやそれよりもA、ちんちん出てんで。」
「あ、ほんまや。」
で、AとB大爆笑。そ、それだけ?笑ってるよ、笑ってるよこの人達。しかも今日一番のクリティカルヒットな笑い。私が頭から煙が出るほど考えに考え、何時間にも思えたあの時間は一体何だったのだ。
全てが馬鹿馬鹿しく思えてきて、私も笑わずにはいられなくなり、3人で腹をかかえてただただ笑った。そして、落ち着いてきた頃に私を襲ったのは…
どんだけ面白い体験談を、どんだけ言葉巧みに語り尽くせども、結局ちんちんひとつにはかなわないのかという脱力感と
ちんちん目の前に、ひたすら頭を働かせていた己が姿を想像した故の、虚無感だけだった。
何やってんですか自分。しかも本当にBはちんちんに気づいてすらいなかったらしいし。どんなオチだよ。ちんちん。
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