2002,04,02 / 15:01
今から五ヶ月ほど前の話。我が家に新しい家族がやってきた。
その子の名前は「チュン」。桜文鳥の赤ちゃんだ。
文鳥を飼うのは初めてで、どうしていいかわからなかったが、妻が何羽か飼っていた経験があった為、飼育に必要なものも全て買うことが出来た。
餌もなんとか与えられるようになった。ピーピーととても元気に餌をねだるチュン。そしてその後にはお昼寝が日課だった。
少しずつ羽根をばたつかせつつも飛べるようになり、かごから元気に出てくると、私の手のひらに向かって一目散!
私はチュンが可愛くて仕方なかった。文鳥がこうも人間に慣れてくれるものだとは知らず、ただただ感動を覚えるばかり。
私の手の中が暖かいのか、すぐに眠ってしまうチュン。そっと頭をなでてやると、クルルと気持ちよさそうにさえずる。
それから10日後・・・
ご飯の次に居眠りが好きなチュン。その日もいつも通り、チュンに餌をあげた後に出勤した。
残業で夜遅くなるも、早くチュンと遊びたい一心で急いで帰る。
「ただいま!」
靴をだらしなく脱ぎ、足をばたつかせながら居間に向かう私。いつものようにパソコンでインターネットをする妻。
・・・あれ?
・・・チュンのかごがない?
部屋の隅に置いてあったのと、季節的なもので、チュンのかごは少々寒い環境にあったのが私も気になっていた。
その為妻が暖かい場所に移動したのだろうと思い、その場所を聞いてみるも返事がない。
変に話をはぐらかす妻。しばらくして、私の嫌な予感が的中してしまった事に気づいた。
ティッシュにくるまれた何かを持ってくる妻。その白い幕が今ほどかれる。
「・・・昼までは元気だったんだけど。」
あんなに暖かかった、真っ白で綺麗な羽根のチュンが、今はもう動かず、恐ろしく冷たい。
だって・・・あんなに元気だったじゃないか。朝餌をやったのは私だぞ。
ただただ泣きじゃくる妻を、何も言わず抱きしめるしかなかった私。
そして間もなく私と妻は、近所の公園にチュンを埋めた。
・・・チュンは私に飼われてシアワセだったのだろうか。本当に私が飼ってよかったのだろうか?
えもいわれぬ罪悪感にさいなまれつつも、気がついたら眠ってしまっていた。
・・・夢を見た・・・
明るい日差しに包まれる、いつもの風景。いつもの居間。私の傍らには妻。そしてチュン。
「チュン・・・私は・・・」
謝りたい。とにかくチュンに一言謝りたいと切に願うも、言葉にならない私の言葉。
「・・・ったよ。」
チュンが私の心に語りかける。
「ボク、シアワセだったよ。」
心なしか、チュンが微笑んでいるように見える。
「短い間だったけど・・・ありがとう。」
「やさしいママに・・・」
「大きい、大きいパパ・・・ありがとう。」
目が覚めた。
・・・私は泣いているのか。
何が起こったのか理解できずにいる私。次第に先ほどの夢を思い出す。今でも決して忘れることの出来ない・・・チュンの思い出。
「ボク、シアワセだったよ。」
自分勝手な夢だとなじられても構わない。でも、決して忘れる事の出来ない夢・・・。
「大きい、大きいパパ・・・ありがとう。」
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